想いを社会を変える一歩に – 仙台・東北発の社会起業家支援事業「SENDAI SOCIAL SEED 2025」-

子育て、教育、環境、高齢化…。様々な領域で課題が顕在化し、ニュースを見るたび『何かできることはないだろうか』と考えてしまう。でも、どこから始めればいいのかわからない。そんなもやもやした気持ちを抱えている方は多いのではないでしょうか。仙台市では今年度、そのような社会課題に関心を持つ方々を後押しするプロジェクトを実施します。どんな小さなきっかけでも、社会を変える一歩になる—そんなメッセージを込めた取り組みと想いについて、仙台市経済局スタートアップ支援課の河原さん、今野さんにお聞きしました。

左から、仙台市経済局スタートアップ支援課 河原さん、今野さん

仙台・東北から広がる“社会課題への挑戦”

東北は、全国に先駆けて人口減少や高齢化など社会課題が深刻化している地域と言われてきましたが、一つの転機となったのは2011年の東日本大震災です。

仙台市経済局スタートアップ支援課 河原さん(以下、河原さん)「震災以降、多様な人材の流入と共に、『誰かのために』『地域のために』『復興のために』といった想いから始まる社会起業家の動きが活発化しました。仙台市ではこの動きを後押ししようと2013年に『日本一起業しやすいまち』を宣言し、起業・スタートアップ支援に取り組んでいます。」

社会起業家とは、起業家の中でもビジネスを通して社会課題の解決に取り組む人々のことを指します。東北の社会課題解決を目指し、仙台市では2017年より仙台・東北の社会起業家のための伴走支援型プログラムも行っています。

同課 今野さん(以下、今野さん)「社会課題の解決は本来は行政が担うべき役割でもありますが、課題が複雑化する昨今、お互いに知恵を出し合うような民間との協働が必要だと考えています。」

これまで仙台市が主催する伴走支援型プログラムに参加した東北6県の社会起業家は、のべ90人以上。終了後もそれぞれの地域で事業を継続しながら、参加者同士の情報交換や後輩起業家へのアドバイスを行うなどコミュニティも育まれています。

引用:仙台市/TOHOKU SOCIAL INNOVATION SUMMIT 2025開催の様子

仙台市の起業・スタートアップ支援は、開始当初から東北全域を対象としています。先日選出された「スタートアップ・エコシステム拠点都市 グローバル拠点都市(https://www.city.sendai.jp/startup-kyoten/ecosystem2nd.html)」にも仙台・東北6県のコンソーシアムで参画しました。

これには仙台が東北の経済のけん引役だという想いと、もう一つ、起業家のコミュニティを支援する想いがあります。

今野さん「皆さん東北各地から参加されるのですが、地元にはまだ社会課題に取り組む起業仲間が少ないことも珍しくありません。仙台に集まることで東北6県の起業家と繋がることができますし、後輩起業家の最終発表会を同窓会のように楽しみに応援してしてくださる方もいます。また、その後地元での次世代育成のプログラムに支援側として協力される方もいらっしゃり、東北各地で社会課題解決に取り組む起業家がさらに広がっています。」

このように成果も出ている一方、プログラムの中では課題も見えてきました。

河原さん「既にビジネスの構想を持っている方々はこれまでのプログラムで支援できたのですが、社会課題に関心はあるものの『何から始めたら良いかわからない』という方々を手助けする事業が無かったんです。なかなか踏み出せない方に向けても、はじめの一歩を応援することですそ野を広げたいという想いがスタートです。」

今野さん「これまでは伴走支援型プログラムにご応募していただいても、採択できる数には限りがありました。もっと多くの方が参加できるような開かれた場を作りたいという想いもありました。」

そこで社会課題や起業に関心を持つ方々に広く参加していただけるよう、すそ野の拡大を目的に始まった新たなプロジェクトが「SENDAI SOCIAL SEED 2025」です。

4つのSTEPで一歩前へ

今回のプロジェクトでは、「知る」・「学ぶ」・「磨く」・「広げる」とそれぞれの興味関心やステージに合わせたサポートを実施します。

<プログラム内容>
・映画で学ぶSDGsと社会課題
・社会起業実践ワークショップ
・スタータープログラム
・社会課題別相談会
・個別相談会
・最終発表会「TOHOKU SOCIAL INNOVATION SUMMIT」

公開イベントの第1弾として開催する「映画で学ぶSDGsと社会課題」では、子供の貧困問題、障害者、環境問題など、様々な社会課題をテーマとした映画を上映します。上映後は同じテーマに取り組む社会起業家のトークセッションを開催するなど、映画を通して社会課題を知り、自分の想いを見つめていただくため初の試みとなるイベントです。

今野さん「社会課題をテーマにした映画やテレビのドキュメンタリーを見たことをきっかけとして問題意識を持ち、そのような社会を変えたいと起業するに至ったという話をよく聞きます。仙台市経済局としては、起業家を増やしたいとの想いはありますが、必ずしも、みんなが起業しなくてもいいと思うんです。社会起業家の活動を知ったり共感したり応援したりする側の人たちも増やしていきたいですね。」

河原さん「映画を入り口にすることで気軽に参加いただき、社会課題をより身近に感じていただけるのではないかと思っています。そこからさらに踏み出したい方には、起業家への相談会や伴走などのステップに繋げていきたいと思っています。」

次のステップでは、ワークショップや相談会を通して参加者自身の想いを形にするきっかけをつくり、後押しします。さらに起業というステップに進む方には、先輩起業家による伴走型の集中支援や最終発表「東北ソーシャルイノベーションサミット」への登壇など、事業プランの発表と支援者・応援者を集めるための場もご用意しています。

また、今年度も、5期目となる大学生向けのプログラム「東北ソーシャルイノベーションアクセラレーターカレッジ(SIAC)」を実施します。6カ月間の実践型プログラムのほか、今年度は「おためし1DAY」プログラムとして、東北で活動する社会起業家へのフィールドトリップや”鞄持ち”として同行し、起業家の1⽇を経験します。

今野さん「仙台には、東北から学生が多く集まります。卒業後は東京などの首都圏へ流出しがちですが、地元の東北に住みながら自分らしく活躍できることを、社会課題解決の想いとビジネスとを両立している東北の社会起業家の姿から感じてほしいと思います。自分も社会を変えられる可能性があると気付くきっかけになればと思っています。」

他にも、プログラムには共通して過去のプログラム参加者、つまり先輩起業家の方々も講師や相談の対応、伴走支援のメンターとして参画します。プログラム参加中から東北の先輩起業家との関係性を築き、終了後もコミュニティの中で持続的な成長機会を得ることができることも特色の一つです。

仙台市からのメッセージ

今回のイベントを通じて、仙台・東北の社会課題や起業に関心を持っている方々へぜひお伝えしたい想いがあります。

河原さん「東北と仙台は、一心同体だと考えています。仙台は東北中から人が集まるハブになっています。東北全体が盛り上がれば、自然と仙台も盛り上がります。このプロジェクトではいくつかの入り口を用意しています。映画などきっかけは何でも構わないので、気軽に参加してみてください。社会課題解決に向けて取り組んでいる多くの人がいることを知ってもらい、一歩を踏み出す人が増えていくように願っています。」

今野さん「課題が少なくない仙台・東北の中で、悩みながらも解決の道を探る社会起業家の方々がたくさんいらっしゃることに、行政としても一個人としても心強さと大きな可能性を感じています。今回のプロジェクトを通じて、一人でも多くの方に、社会課題を解決することやよりよい東北の未来を創っていくことに対する関心を持っていただくことができたらと考えています。一緒にこの輪を拡げていけたら嬉しいです。」

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【SENDAI SOCIAL SEED 2025】
https://sendai-socialseed.site/⁩

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