共感を生み、聴衆の行動を引き出すプレゼンスキル ーSENDAI SOCIAL SEED 2025「社会起業実践ワークショップ」プレゼンテーション編ー

2025年12月20日(土)、卸町会館(仙台市若林区)にて、仙台・東北で社会課題の解決に挑戦したい人を支援するプログラム「SENDAI SOCIAL SEED 2025」の一環として「プレゼンテーションワークショップ」を開催しました。『ビジョン策定』『ビジネスモデル作成』『ロジックモデルの構築』『プレゼンテーション』の4つのテーマで実施する社会起業実践ワークショップの2回目です。

社会課題の解決に向けては、個人や一企業だけでは困難な場合が多く、共感から幅広い方々の応援を獲得していくことが重要です。本ワークショップでは、自分の事業の伝え方を見直し、様々なステークホルダーに届けるためのプレゼンテーションスキルを磨くことを目的として実施しました。

当日は、2月に行われる「東北ソーシャルイノベーションサミット 2026」登壇者など、子どもの居場所支援、不登校、メンタルヘルス、栄養指導などの分野で社会課題解決に挑む方々が参加しました。


相手に伝える実践的スキルを習得する3時間

ワークショップは、具体的なプレゼンテーションの基礎解説と演習を繰り返しながら進行しました。

講師を務めたのは、元商工会職員として中小企業支援に携わり、現在は大手企業の新規事業開発支援や全国で起業家支援を行う、株式会社エンターテインの常川朋之さん。地域の起業家支援プログラム等での講師やメンタリング経験も豊富で、仙台市のアクセラレータープログラムではメンターとしても活動されています。また、常川さん自身もコーヒー事業を営む起業家であり、自身の経験からの気づきも、講師やメンターの経験に活かされていることが伝えられました。


(講師を務められた株式会社エンターテイン常川さん)

「プレゼンのゴールは、聞き手の行動を引き出すこと」と伝える常川さん。共感を生み、応援や協力などの行動を引き出すことをゴールに、ビジョンやアイデアを相手に響く形で伝えるための実践的なスキルを、参加者たちは身につけていきました。

当日実施したワークの内容をいくつかご紹介します。

【想いを伝える難しさを痛感、1分ピッチからスタート】

ワークショップは、自身の事業を「1分ピッチ」で発表することから始まりました。突然の実施に戸惑いを見せつつも、参加者たちは後で聞き返せるようにスマートフォンで録音しながら、事業やアイデアについて伝え切りました。


(スマートフォンで録音しながらの1分ピッチ)

6名全員の発表後、常川さんは「Why(なぜやるか)」「How(どうやって実現するか)」「What(なぜやるか)」がどのくらいの割合でピッチに盛り込まれていたか参加者に問いかけます。

「事業を説明する場合、Whatに説明が偏りがちですが、社会起業家にとって特に重要なのは『想い』をどう伝えるかであり、Whyを明確にすることで、聴衆の共感や理解を得やすくなる」と強調しました。加えて「Who(誰に届けるのか)」を明確にすることの大切さを示し、ターゲットユーザーの解像度を高めることが、より心に届くプレゼンにつながることも伝えました。

【「Why」を掘り下げるペアワーク】

参加者同士がペアを組み、「⾃分がしている事は何か(What)」「なんのためにしているのか(why)」を伝え合いました。30秒で一方が伝えた後、聞き手が「あなたのやっていることはつまり◯◯なんですね」というように言葉にして返すことで、お互いに考えを掘り下げるワークです。

常川さん自身もコーヒー事業で起業した際、他者との対話の中で「それはコーヒーの民主化ですね」と言われたことで、自分でも気づいていなかった本質が明確になった経験があるとエピソードを交えました。

Whatは明確なことが多い一方、Whyは一人で考えても見えにくく、仲間や顧客との対話によって深まっていくもの。定期的に問い直し、磨き続けることの大切さを、参加者はこのワークを通じて体感しました。


(お互いにWhyやWhatを伝え合う演習)

【相手と状況を意識したピッチ練習】

このワークでは、聞き手の役割を「投資家」「支援者」「ユーザー」のいずれかに設定し、その立場になりきって1分間ピッチの練習を行いました。発表後、投資家役は「収益性があるか」、支援者役は「共感できるか」、ユーザー役は「自分が使いたいと思えるか」といった視点でフィードバックを実施。伝わった点と伝わらなかった点を整理します。

また、エレベーターピッチと言われる30秒以内の機会、1分の紹介の場、7分のピッチコンテスト、10〜15分の商談など、場面に応じて伝えるべき内容が異なることが解説されました。例えば30秒で説明できるのは250字程度。この字数で、⾃分が誰で、何を提案し、相⼿にとってどんなメリットがあるのかを説明しなければなりません。

常川さんはこのワークを通じて、聴衆とその参加理由を理解する重要性と、時間や状況に応じてプレゼン内容を調整する必要性を伝えます。「会場の全員に伝えることより、届けたい相手に、一人でも深く刺されば大成功」と強調しました。


(ワークを繰り返す参加者たち)

【「ロジカル」な組み立てを演習】

常川さんは、正しく伝えるために必要なこととして、聞き⼿を「迷わせない」こと、そのためにロジカルな説明の構築が大切であることを話します。その上で示されたのが、結論に対し「必要性」「効果」「実現手段」の枠組みで整理し、事実と根拠で支える3段ピラミッド構造です。

この順番で組み立てることで、聞き手が理解しやすい説明になることを伝えた上で、参加者は自らのプランについて書き出しました。

【「事業創造カード」作成で事業への想いとプランを整理】

個人ワークでは「事業創造カード」の作成を行いました。各カードには課題やユーザー、競合、チームなど、事業内容ややりたいことを伝えるための記入項目があります。例えば課題設定では、マイナスの状態からゼロを目指すのか、ゼロからプラスにするためのビジョン設定なのかを明確化します。また、自分自身についても何者なのかを表現し、課題にフォーカスする理由を言語化するなど、作成のポイントや意図が説明されました。

参加者はこのカードを作ることによって、自分がやるべき事業なのか、事業プランがユーザーにとって最善であると言えるかなどを振り返り、事業への想いとプランを整理しました。


(自身の事業を振り返りながらワークに取り組む参加者たち)

変化を実感、2分間の最終ピッチ

ワークショップの締めくくりとして、参加者は2分間の最終ピッチに挑戦しました。「事業創造カード」3枚で整理した内容に沿って、自身のアイデアを伝えます。冒頭に行った1分間ピッチと比べると、論理の流れが格段にわかりやすくなった発表となりました。

発表後の総評で常川さんは、次のように振り返りました。

「最終ピッチはロジックがしっかりつながり、前後の流れも自然でした。最初の1分ピッチとは見違える内容です。ピッチはとにかく場数が大切。周囲の人に聞いてもらったり、事務局に壁打ちしてもらったりすることで磨かれていきます。腹落ちしない時やモヤモヤする時は、調べたり、人の話を聞いたりしながら深めてみてください。終わりはありませんので、引き続き磨き続けてほしいと思います」

さらに、運営を担うINTILAQの本多プログラムディレクターからも、参加者へのメッセージが送られました。

「一度決めた内容でも、迷いが生じたら思い切ってリセットして構いません。本当にやりたいことなのか、確信が持てるまではリセットし、ゼロから組み直すことを恐れないでほしいと思います。プレゼンはあくまで通過点です。これから進む方向性を見つけるためにも、問いを深め続けてください。さまざまな選択肢を検討したうえで選んだ道は、きっと迷いません」


(最終ピッチで想いを伝える参加者)

学びが自信に変わった、参加者の声

ワークショップを通じて、参加者それぞれが自分なりの変化を実感していました。

一般社団法人manaco 代表理事の中野さんは、
「他の参加者のプレゼンを聞けたことがとても良かったです。客観的に見直し、自分の表現の偏りなどに気づくきっかけになりました。同じ志を持つ仲間と学びを共有し、フィードバックし合えたことはとても貴重な経験でした。基本的なプレゼンスキルを学ぶ機会はなかなかないので、本当にありがたい時間でした」と振り返りました。

子ども食堂「えむわんず」代表の久保さんは、
「いつもプレゼンは緊張してしまい、最初のピッチも1分間話し切ることができませんでした。今日はロジカルな組み立て方を学べて良かったです。場数を踏むことが大切だとアドバイスもあったので、次のプレゼンに向けて練習を重ねがんばりたいです」と、前向きな決意を語りました。

そのほかの参加者からも、 「プレゼンは何度やっても難しいが、基本から学び伝え方を意識できるようになった」「今日参加し、自分の事業を整理できた感覚がある」など、前向きな感想が聞かれました。


(緊張しながらもピッチに挑戦する参加者)

社会課題への取り組みに関心がある方へ

今回のワークショップを通して、参加者はプレゼンテーションのスキルだけではなく、「自分はなぜこの課題に向き合うのか」を見直し、言語化する力を習得したように感じました。想いを整理し、本当に伝えたい人へ、伝わる形に変える。その積み重ねが、事業への共感や応援の輪を少しずつ広げていきます。

2026年2月に開催される「東北ソーシャルイノベーションサミット 2026」は、”伝える”場の一つです。当日プレゼンに臨む5名は、選考イベントで想いを言葉にし伝えたことで、サミットで大勢の前でプレゼンするステップへと進むことになりました。その姿からは、完璧でなくてもまず言葉にしてみることで可能性が広がっていくことが伝わってきます。

社会課題に関心はあるものの「自分に何ができるのかわからない」と考えている方がいれば、まずはサミットに参加してみませんか。サミットは社会課題に向き合う挑戦者と、その想いを受け取る人が出会う場です。オーディエンス投票や交流を通じて応援することも、社会課題解決に参加する大切な一歩です。

また、著名なキーノートスピーカーによる講演や、社会起業家による発表が予定されています。すでに社会課題への挑戦を始めている方々にとっても、登壇者の声に耳を傾けながら学びを深め、活動紹介や交流の場を通じて、ネットワークを広げる場としてご活用ください。未来を応援する仲間として、ご参加をお待ちしています。

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東北ソーシャルイノベーションサミット 2026
~社会課題に挑む登壇者の”想い”と”事業”がつながる場~

日程:2026年2月11日(祝)
会場:仙臺緑彩館
定員:150名

※イベント詳細・お申し込みはこちら↓↓↓

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主 催:仙台市
運 営:一般社団法人IMPACT Foundation Japan(INTILAQ東北イノベーションセンター)

*本事業は、仙台市による「R7年度・社会起業家支援事業」として開催しています。

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