社会課題に向き合う想いが、地域の未来をひらく -仙台・東北の起業家応援イベント「TOHOKU SOCIAL INNOVATION SUMMIT 2026」開催レポート-

2026年2月11日(水)、仙台市青葉区の仙臺緑彩館にて、「TOHOKU SOCIAL INNOVATION SUMMIT 2026」を開催しました。

本イベントは、仙台・東北で社会課題の解決に挑む起業家を支援する、2つのプログラムの集大成として実施しました。自身が社会課題に立ち向かう「想い」を深く見つめ直し、事業の核となるビジョンを明確にする「Social Impact Accelerator(SIA)スタータープログラム」と、立ち上げ期・創業後の起業家を対象に、成長と社会的インパクトの両立を支援する「Social Impact Booster(SIB)プログラム」。それぞれの選考を経て選出された計11組の採択者たちが登壇し、社会課題への想いや、数ヶ月間のプログラムを経て磨き上げられたビジネスプランを発表しました。

レポートでは、社会課題や起業に関心を持つ方などが定員いっぱいに来場し、熱気に包まれたイベントの様子を、SIAスタータープログラム採択者の発表を中心にお伝えします。

【開催プログラム】
ー オープニングキーノート
ー 「Social Impact Accelerator スタータープログラム」採択者の発表
ー 「Social Impact BOOSTERプログラム」採択者の発表
ー 審査結果発表・エンディング

共感と社会インパクトを生むための、諦めない心

オープニングキーノートは、株式会社雨風太陽の高橋博幸さんが登壇しました。「食べる通信」発行や「ポケットマルシェ」の運営を通じ、食や地域と向き合い続けてきた高橋さん。東日本大震災をきっかけとした社会起業家としての自身の歩みを振り返りながら、都市と地方が共存する社会の必要性を語りました。

社会起業家にとって共感は不可欠とし、情熱を持って変革に挑む覚悟や社会インパクトを可視化する試みの重要性を訴えました。

スライドを一切使わず、言葉だけで語りかけた45分間。「何のために生きるのか」という問いに真摯に向き合い、実現するまでやり抜く「執念」の重要性を強調する力強いメッセージは、これからピッチに臨む採択者や、会場の人々の心を熱くしました。

SIA採択者5名が、磨き上げた想いやビジネスプランを発表

「Social Impact Accelerator スタータープログラム」採択者としてステージに立ったのは、11月に行われた選考イベントで選出された5名。これまでワークショップやメンタリングを通じて、自身が向き合う社会課題の解像度向上やビジョンの明確化のほか、持続可能なビジネスモデルの構築を目指して、日々磨き上げてきました。

▶︎ 金澤 展嗣 氏(進活あおもり 代表

「社会に『聴く』を増やす!聴き手から始まる自己実現」

自身の学生時代の進路の悩みや引きこもりの経験が、活動の原点になった金澤さん。子どもも大人も、本音で語り合う機会が失われていることへの危機感を感じたといいます。金澤さんは「聴くこと」が持つ大きな力を実感し、「あなたの想いを聴きたい」を信念に、対話の場づくりなどの活動を続けています。

発表では、相手に寄り添い、「大丈夫?」と自然に声をかけ合える温かな社会の実現を訴えました。こうした活動を「#思いやりニッポン」として発信し続けるとともに、2026年8月青森市内での「思いやりとうほくサミット」開催を力強く宣言しました。「一人ひとりの経験が、誰かへのギフトになる」と語る金澤さんの言葉には、青森から世界へ思いやりの輪を広げようという決意と、あたたかな想いが込められていました。

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▶︎ 川田 京助 氏(みちのメンタル 代表)

「精神疾患患者と自殺者を減らす」

元消防士でエンジニアの経歴を持つ川田さん。大切な先輩を亡くした経験から「メンタルヘルス事業で東北を元気にしたい」と立ち上がりました。

メンタルヘルスケアにおける課題は、心の不調に「気づけない・言えない・繋がれない」ことと考える川田さん。その解決策として、LINEを活用したシステム「こころの消防署」の開発を続けてきました。医学的根拠に基づく定期検診やAIによる個別サポート、気分の可視化による予防の仕組みを構築。精神自助グループとも提携し、さらに当事者の声を反映したサービスへと改善を進める予定です。

今後は企業への導入を提案し、宮城県内から展開を始めます。予防と適切なサポートで、誰もが人生を歩み直すスタートを支援したいと、一人ひとりの命や心に向き合う想いが印象的な発表でした。

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▶︎ 久保 穂ノ花 氏(えむわんず 代表 / 宮城教育大学院 M2)

「すべての子どもが今も未来も笑顔でいられる社会をつくる」

自身の幼少期の原体験から、「すべての子どもたちを今も未来も笑顔に」をビジョンに掲げ活動する久保さん。プログラムを通じて対話を重ねる中で、「日常からの関係性の喪失」という課題が明確になったといいます。

久保さんが提案するのは、町内会などの既存コミュニティの再活用です。子どもたちが地域の一員として「役割」を持ち、主体的に参画することで、自己肯定感や有用感を育み、孤独を解消する仕組みを目指します。企業連携や寄付を組み合わせ、一過性の支援に留まらない、地域全体で支え続けるモデルを提示しました。

かつての自分を支えてくれたような「ひとりの大人」として向き合いたいと、次世代へ孤独や不安を連鎖させない社会の実現を願う久保さんの言葉には、未来への強い決意が込められていました。

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▶︎ 中川 香苗 氏(こどぷら株式会社 代表取締役)

「子どもが主役になる『地域まるごとフリースクール』」

子どもの不登校をきっかけに、「地域コミュニティの断絶」と「大人の余裕のなさ」に強い違和感を抱いたという中川さん。17年勤務したIT企業を退職し、2026年春に塩竃市でフリースクールを開設する挑戦を始めました。

活動の特長は、独自の「サポーター制度」です。大人がそれぞれの得意なことを子どもに教え、子どもはそのお返しに地域の魅力を「子ども新聞」で発信する。子どもを起点に、地域に支援や学び、さらには人々の感謝や想いが循環する仕組みを生み出します。スクール利用料に加え、サポーター登録料や寄付など多様な収益源で持続可能なモデルとし、宮城県内、全国への展開も目指しています。

大人が楽しみながら挑戦する姿を見せ、子どもの意志で生き方を選べる社会を作りたいとの中川さんの覚悟に、会場からは共感の拍手が送られました。

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▶︎ 中野 柊一郎 氏(一般社団法人manaco 共同代表)

「こどもを孤立させない社会をつくる manaco の事業と仕組み」

「子どもを孤立させない社会」を目指し、仲間と学生団体を立ち上げ、学生時代から支援を続けてきた中野さん。既存の居場所にも繋がれない、潜在的な孤立状態にある子どもが宮城県内に約1,000人いると現状を指摘します。

中野さんが提案するのは「オンライン×個別」の掛け算による支援です。対人不安などのハードルが低いオンライン空間で、まずは「一人目の味方」として信頼関係を構築。そこを起点に、地域のリアルな居場所や社会へ橋渡しするハブの役割を担います。その実現に向け、新たなサポーター制度の開始と、企業やNPOへの連携を呼びかけました。

2033年までに県内全35市町村との連携を目標としています。社会全体で子どもを支え、孤独の連鎖を断ち切ろうと、中野さんの熱い想いが力強く語られました。


後半には、SOCIAL IMPACT BOOSTER(SIB)プログラム採択者によるピッチも行われました。ソーシャルインパクト拡大のフェーズにある起業家たちが、それぞれの事業の現在地と今後の展望を語りました。

審査員と会場が選んだ3つの賞

エンディングでは、審査結果の発表が行われました。審査員により選定される「大賞「優秀賞」および、会場の参加者投票により、最も共感したと選ばれた採択者に贈られる「共感賞」の3つの賞です。Social Impact Accelerator スタータープログラムの受賞者は以下の通りです。

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【審査結果】
Social Impact Accelerator スタータープログラム

◉ 大 賞 
中川 香苗 氏 こどぷら株式会社 代表取締役

◉優秀賞 
川田 京助 氏 みちのメンタル 代表

◉共感賞
中川 香苗 氏 こどぷら株式会社 代表取締役

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大賞を受賞した中川さんからは感謝の言葉とともに、「メンタリングを通じ、これまで他責にしていた自分に気づき、覚悟を決めることができた。この受賞でようやく認めてもらえた気がする」と、ここまでの苦悩を振り返っての想いを伝えられました。

情熱を「仕組み」に変え地域へ

イベントの締めくくりには、審査員を代表して東北学院大学教授の伊鹿倉先生より総評が述べられました。

日常に埋もれた社会課題を自らの手で掘り起こし、可視化した登壇者たちの真摯な姿勢や、情熱を一時的なもので終わらせず、持続可能な「仕組み」へと昇華させている点を高く評価し、「皆さんは我々が目指す理想の人材像そのもの。ぜひ学生たちのメンターにもなってほしい」と賛辞を贈りました。「挑戦がここから広がり、本当に必要としている方のもとに届くことを願っている」と採択者たちへ送られたあたたかなエールで、イベントは幕を閉じました。

社会課題に関心はあるけれど、何から始めればいいかわからない。そんな方にこそ、今回の採択者たちの言葉や姿が、小さな一歩を踏み出すヒントになるはずです。

本プログラムは今後も、それぞれのフェーズに応じた支援を通じて採択者たちの歩みを後押しするとともに、社会課題の解決に向けた新たな挑戦も広く応援していきます。

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